PEEKベスタキープ^®/ベスタキープ^® -J

PEEK（ポリエーテルエーテルケトン）のベスタキープ^®は、非常に高い耐熱性をはじめとする、エンプラに求められる主要な特性を高いレベルで有した熱可塑性結晶性樹脂です。自動車・半導体・航空宇宙・医療産業などの幅広い分野における先端的な用途・製品に使用・検討がなされており、将来の技術革新に関わることができる非常に高いポテンシャルを有した樹脂材料です。

一般にPEEKと聞くと、その高い加工温度（融点が約350℃）由来の高い成形加工性を求められるイメージを持たれがちです。しかし、射出成形・押出成形・粉体塗装などの熱可塑性樹脂を成形するための主要な量産加工法に加え、最新技術のFDM方式（熱溶解積層方式）などの実績を有した、幅広い加工性に適応した材料です。

ベスタキープ^®は熱可塑性樹脂の中でも機械特性が温度の影響が受けにくく、高温環境での使用や設計がしやすい材料です。例えば、ベスタキープ^®は高耐熱のエンプラとして幅広く使用されているPPS（ポリフェニレンサルファイド）よりも優れた耐熱性があります。これは温度の影響を受ける変異点（ガラス転移温度）がPPSは約90℃に対し、ベスタキープ^®は約150℃であることからその優位性がわかります。一例として、両材料の機械特性の温度依存性に関するグラフを示します。また、樹脂は熱環境下に晒されることで劣化が進みますが、ベスタキープ^®はその安定的な化学構造から、樹脂材料中でトップレベルの耐熱老化性も有しています。

ベスタキープ^®は、強靭で耐摩耗性に優れていることも特長の1つです。そのため、ギアやワッシャーなどの繰り返し負荷がかかるような摺動部品に適しています。一般的には摺動材にはPOM（ポリアセタール）やPA（ポリアミド）がありますが、ベスタキープ^®は高い耐熱性があるため、高温環境下のような過酷な使用環境下で、非常に優れた機能を発揮します。また、ベスタキープ^®はトップレベルの耐疲労性も持ち合わせているため、既存使用しているエンプラからPEEKにすることでのメンテナンス工数を減らす、もしくは無くすことが可能です。一方で、金属からベスタキープ^®に置き換えることで駆動音の静粛化や軽量化を実現でき、新たな付加価値を生み出すための重要な材料として機能します。

ベスタキープ^®はフッ素樹脂に次ぐ、高い耐薬品性を有しています。自動車、工業製品の各種機構部品に使用されるオイル・グリス・駆動油との接触や浸漬や、高濃度・高温環境下で薬品洗浄に晒される半導体製造工程でも高い信頼性を誇り、長年の使用実績があります。また、PA（ポリアミド）やTPU（熱可塑性ポリウレタンエラストマー）などの汎用エンプラの弱点である加水分解についても、ベスタキープ^®は懸念する必要が無い材料です。さらに、様々な樹脂の中でもトップクラスの耐放射線も有しています。これらの特長を活かし、ガンマ線・水蒸気滅菌が必要な医療機器の部品や、高温・高湿度環境下に晒される石油・ガス掘削設備などの部品の一部にベスタキープ^®は使用されています。図「PEEKの耐薬品性」はベスタキープ^®の耐薬品性、、「200℃の熱水環境下における機械強度試験」は耐加水分解性を示したグラフです。

PEEK樹脂のベスタキープ^®に対する市場からの注目は年々高まっています。当社 兵庫県姫路市網干にあるテクニカルセンターでは、製品設計から成形加工まで技術サポートをすると同時に、お客様のニーズに沿った付加価値ある開発をすることに努めています。
スーパーエンジニアプラスチックのトップクラスに位置する、ハイパフォーマンスポリマーのPEEKは、過酷な使用環境下や、安全性・信頼性が求められるアイテムに最適な樹脂です。自動車をはじめ、航空宇宙、産業用途、メディカルなどの幅広い分野で使用されています。このPEEKのベスタキープ^®をより知って頂くため、どのような分野、用途に使用されているかを以下より詳しくご紹介したいと思います。